なれる!SE 2週間でわかる?SE入門

 ブラックIT企業に入社した、プログラミング経験どころかコマンドプロンプトの使い方もろくにわからない新卒社員桜坂工兵君の受難のお話。
 生々しいブラック企業ぶりからして、あとがきにもある著者の実体験の悲惨さを垣間見るところ。
 でもまあ実際ここまで酷いのはなかなか無い…はず。


 辛いことも多いこの業界だけど、「手と頭とPCさえあればこんなにもいろいろなものが生み出せる」魅力をちゃんと伝えようとしてくれるのは好感触。だからこそ無知な客から軽んじられてしまうことも現実に起こりうるが、そういった悲しい面もしっかり描写している。
 1巻の段階ではルーターのコンフィグいじり程度の内容だけど、こういうのも動くと嬉しいもんだよね。動かないものを動くようにする喜びと苦労、苦悩を常に表裏一体として描いているあたり、涙無しでは見られない。
 IT業界は悪い面ばかり有名になってしまっているから、良い所も悪い所も両方伝えようとしてくれる媒体としてなかなか貴重。


 IT業界あるあるよりも、新社会人あるあるなネタが多いので、IT業界関係なく新社会人ほど楽しく読めることだろう。まあいろんな人皆同じように苦悩してますってことね。
 わかってはいるんだけど、なかなかね。
 きっと何年目になっても自分が納得する姿にはなれないだろうし、それをよしとしないで頑張っていけるのならば、それでいいのだと思う。
 しんみりと考えてしまうが、お話は全編ブラックなジョークが多くて疲れた身体には逆に癒しになった。