Trials Fusion

 盗んだバイクで走り出す、行き先もわからぬまま。
 いや、行先はわかっている。確かにゴールはあるんだ。それが21世紀の15の夜。

 現代っ子尾崎豊の感性からやや逸れてしまったが、それでもわからず屋な社会や組織、大人たちに向けた悲痛な叫びは消えることがない。
 そう、Trials Fusionでも同じことだ。
 4月16日、世界的にはTrials Fusionのリリース日。夕方頃、一度は日本国内の360ストアで購入できるようになったTrials Fusionだが、数時間後には日本国内から購入ができなくなった。実は先月の時点で配信日は遅れると発表されていたのだが、ここに来て二重に撤回されると複雑な心境にもなる。聞いた話では誤配信されたソフトは日本語ローカライズ済だったとか。嘘か真か。画像を見せられれば信じるしか無いが。
 なぜこんな誤配信が起きたのか。真実はわからないが、あらゆる事情が交錯して生まれた結果なのだろう。わかるのは単なる誤配信ということ。しかたのないこと。責められないこと。
 しかしむなしい。そして俺はむなしさ余ってOne版Trials Fusionを購入した。覚えたてのGVimを使い、星空を見つめながら、自由を求め続けブログを書いた。そんな夜。

 One版は特別グラフィックが良いわけでもなく、解像度もPS4版に劣るらしいが、振動トリガーが非常に良い味を出している。やはりトリガーを使わせるゲームはXboxだ。そして、その最高峰がOneだ。

 Rトリガーでアクセルをふかし、ひたすらに走る。何かを忘れるように、何かを手に入れるために。ブレーキもあるが、ほとんど使わない。前に進みたいからだ。
 何が手に入ったのかはわからない。ランキングも俺一人だ。ゴールした事実がある。物品としてはゴールドメダルも手に入った。しかし欲しかったものはそれだったのか。


 違うんだ、本当に欲しかったのは、フレンドとせめぎ合うあのごちゃごちゃしたランキングだ。1ランク上のバイクや卓越したテクニックを駆使して5馬身差を付けてゴールしているあの憎たらしいフレンド達のゲーマータグだ。
 人間やめてるタイムを叩きだした人を見かけて心配したり、だいたいのコースでだいたい似たようなタイムを出す人を見かけてシンパシーを感じたり、途中で脱落した人を見かけてほくそ笑んだり、そんな言葉のない、悪趣味な非同期コミュニケーションがない。それがただ寂しい。


 このゲームは素晴らしいゲームだが、少なくとも俺の環境ではまだまだ。こんなもんじゃあないだろう。Trialsのポテンシャルはこんなもんじゃない。
 やはり人が多いことは正義だった。360日本語版が正式に配信されたらそっちも買っとくかな。でも振動トリガーいい感じなのでちょっと離れづらい。しばらくはOneで頑張ります。

 そして仲間たちは今夜One版Trials Fusion購入の計画を立てる(大団円)。