2016年セントラルリーグ優勝

 ついにこの日がやってきました。
 かねてから我々若い広島カープファンは過去の優勝を、テレビや親、あるいは親戚から、それはそれは当時のカープは強かったんだよ、それに比べて今のカープはダメだね、という言葉とともに伝えられてきました。


 非常に悔しい思いをしてきました。しかし、同時に羨ましく、そして尊敬さえしていました。
 球団創設から25年優勝のないまま応援してきた広島市民。26年目の1975年に悲願の初優勝。80年代の黄金時代。
 ルーツの改革、ミスター赤ヘル山本浩二、鉄人衣笠、精密機械北別府、ホプキンスの優勝を決定づける3ラン、江夏の21球、二連覇、病床の津田のために一丸となっての優勝…
 それは親から子へ、子から孫へ語り継がれていく伝説のようであり、おとぎ話のようであり、いずれにせよ我々は、それほどの偉大なる黄金時代は過去の話であり、同時に遠い未来のこと。得難きもの。それほどの凄まじい時代を迎えるにはまだまだ戦力不足、応援不足という感想しか抱けませんでした。
 今となればこれは黄金時代へのコンプレックスにしかなっていないですし、悪い大人が子供に施す洗脳教育だったのではないかなと思いますが、こういった伝説じみた表現が俺をカープにのめりこませてくれた一因であることもまた否定はできないので難しいところです。


 なんにせよ、00年代とは比較にならないほどの暗黒を支えた初期のカープファンの苦労をを思えばこそ、俺はファンであり続けられたのだと思います。どれだけBクラスが続いても耐えることができたのだと思います。
 初期の暗黒を支えたファンに比べれば俺はまだまだ、まだまだ応援が足りないと。ずっとそう思いながら応援し続けてきました。


 そして今年、25年ぶりの優勝へのチャンスが巡ってきました。奇しくも初期の暗黒からの脱却とほぼ同じタイミングでの優勝チャンス。
 前評判は高いものではありませんでしたし、俺自身良くても3位程度を予想。まあしっかり育成する年にしようね、と臨んだ2016年のシーズン。
 結果を見れば圧倒的でした。
 現時点で球団新記録の82勝というのがすべてを物語っているでしょう。もちろん昔とは試合数も異なりますし、交流戦の存在もあるので比較はできませんが、それでもセリーグでのカープの傑出っぷりは目を見張るものがあります。


 史上最高の広島東洋カープが突然生まれた2016年。
 もちろん去年まで何も無かったわけではありません。芽はありました。
 しかし、今年になって、ここまで一気に花開くとは誰も想像しなかったでしょう。もっと時間をかけて、3年くらいの間に優勝のチャンスを掴めればと、ファンである俺でさえそう思っていました。
 ファンでありながら常に優勝を信じ続けることができなかったことについては情けないなと思うところではありますが、一緒に強くなっていきたいという思いはファンになった17年前から変わりませんでした。
 だからこそ、今この瞬間本気で喜ぶことができています。


 本当に、ありがとう。ありがとう。そしておめでとう。
 なんというか、お互いに、ありがとうと、おめでとうを交わしたくなる、不思議な空間がそこにはありましたね…
 この気持ちは今いる選手首脳陣スタッフだけへのものではない。かつて広島に在籍した人々すべてに対して向けたいところでもあります。
 特に90年代や00年代を支えてくれた選手。
 ずっとBクラスでも、それでもあなたたちが戦い続けてくれたから、俺もファンを続けられたよと、そう言ってあげたいと思います。
 本当に、ありがとうございました。